Shopifyで海外発送するには？設定法と海外販売のポイント紹介

ECストアを運営している事業者の中には、海外市場へ参入してECビジネスを拡大していきたいと考える方々がいます。しかし、それらを実現する上でハードルに感じるのが海外発送ではないでしょうか。海外向けの送料設定や関税設定、どの配送業者を選べば良いのかなど悩みは尽きません。

今回は、Shopifyでの海外発送に必要な設定や海外販売をスムーズに進めるための機能や考慮すべきポイントを紹介します。海外市場への参入を検討している方は、ご覧いただき、自社のECサイト運営にお役立てください。

Shopifyにおける海外発送について

Shopifyは、デフォルトで海外向けの設定がされている点から、国内だけでなく海外発送も視野に入れたECプラットフォームです。海外発送で考慮すべき配送料の設定や関税に関する設定などが、管理画面上から行えるため、他のECプラットフォームよりも比較的手軽に対応可能です。

Shopifyによる海外発送の流れ

Shopifyの海外発送に関する設定は、全て管理画面上から行えます。ストアオーナーは、運営方針にのっとって各種設定と商品梱包、配送業者の手配を行うことで、海外発送が可能です。海外発送の具体的な流れは以下になります。

• 発送エリアの設定
• 送料と関税の設定
• 商品重量の設定
• 商品梱包
• 配送業者の手配

それぞれの設定について詳しく見ていきましょう。

発送エリアの設定

はじめに発送エリアを設定します。Shopifyでは、デフォルトの配送設定がされていますが、海外発送する場合は対象とする国や地域の設定が別途必要です。発送エリアを設定するには、最初にそのエリアの国や地域を含むマーケットを追加する必要があります。

マーケットの追加と発送エリアの設定は、Shopifyの管理画面から以下の手順で対応できます。

1.「設定」→「マーケット」を開く

2.画面上部の「マーケットを追加」をクリックする

3.「国/地域を追加」から発送対象の国もしくは地域を選択する

4.任意のマーケット名を設定し、保存ボタンをクリックする

5.「設定」→「配送と配達」を開く

6.配送欄にある「新しいプロファイルを作成する」をクリックする

7.新規配送エリアより、追加したマーケットを選択して完了ボタンをクリックする

配送エリア欄に追加したマーケットが反映されていれば、発送エリアの設定は完了です。

送料と関税の設定

発送エリアの設定が完了したら、送料と関税の設定をします。送料設定の際は、国内発送と同様に商品重量に合わせて送料を設定します。国内発送と異なるのは、関税の設定が必要な点です。関税は、他の国から商品を輸入した際に、輸入する側の国が商品に対してかける税金です。

関税の設定はShopifyの管理画面から以下の手順で行えます。

• 「設定」→「関税と税金」を開く
• 「関税と輸入税」の設定をクリックする
• ECストア側もしくはユーザー側のどちらが関税を支払うかを設定する
• 徴収する発送国/地域を選択する
• 海外販売する商品の「HSコード」を設定する

HSコードは、「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約」に基づいて定められたコード番号です。具体的なコード番号は、財務省貿易統計で調べることができるため、参照の上登録しましょう。ストアポリシーの通知設定と利用規約に同意したら設定完了です。

商品重量の設定

次は、海外発送する商品重量を設定します。Shopifyは、商品重量によって配送料金が異なる仕様のため、正確な重量値の設定が必要です。

商品重量は発送の際の梱包材の重量は含めず、商品そのものの重量を計上します。Shopifyハードウエアストアでは、配送用のはかりが販売されているため、必要に応じて購入を検討してみてはどうでしょう。

商品梱包

海外ユーザーから商品オーダーが入ったら商品を梱包します。海外の物流業者は、荷物の扱いが少々乱雑であるため、国内発送での梱包を基準にすると、商品が破損する恐れがあります。ガラス製品や精密機械を取り扱っている場合、緩衝材や梱包資材を組み合わせて、商品の固定頑丈な段ボールを使用するなどして工夫しましょう。

配送業者の手配

商品の梱包が終わったら、海外発送で利用できる配送業者を選定します。越境ECでは主に、以下の業者が利用されます。

• 日本郵便
• クーリエ便

それぞれの配送業者について詳しく見ていきましょう。

日本郵便

海外へのお荷物の送り方 初心者ガイド | 日本郵便株式会社

日本郵便は、世界各国・地域の郵便事業とネットワークインフラを構築し、事業者の物流課題やニーズにあわせたサービスを提供しています。日本郵便が提供しているサービス例として、以下があります。

• EMS（国際スピード郵便）
• 国際eパケット
• UGX（ゆうグローバルエクスプレス）
• JPロジスティクス

なかでもEMCは、世界120以上の国と地域に30kgまでの荷物を発送できるサービスです。日本郵便が提供している海外発送サービスにおいては、主要な配送手段になっています。

クーリエ便

クーリエ便は、書類や小口荷物を届ける民間の配達サービスです。国際発送は国内発送とは異なり、荷物の通関手続きが必要になります。クーリエ便業者は通関士を雇っており、通関手続きを代行してくれるため、事業者は通関手続きに関する面倒な手続きを自分で行う必要がありません。

また、商品到着までにかかる日数が日本郵便よりも早く、発送エリアと配送方法次第では最短1日で商品を送れます。クーリエ便の有名な業者としては、主に以下が挙げられます。

• FedEx（世界最大規模の総合航空貨物輸送会社）
• DHL（ドイツの国際発送サービス）
• UPS（アメリカの国際宅配会社）

Shopifyでも上記の配送業者を利用でき、一部配送業者によっては配送料の割引も行っています。

効率よく海外進出を実現できるShopify Marketsとは

Shopify Marketsとは、マーケットの特定や販売準備、立ち上げ、最適化を1つのストアで一元管理できる機能です。多くの事業者がハードルと感じる、通貨変換や現地での支払い方法の提供、関税や輸入税の計算などをより簡単に管理し、海外市場への参入障壁を減らせます。

Shopify Marketsの特徴は、主に以下の3つが挙げられます。

• 海外のマーケットへ簡単に参入できる
• 各マーケットに合わせたカスタマイズができる
• Shopifyの管理画面から全てのマーケットを管理できる

それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

海外のマーケットへ簡単に参入できる

Shopify Marketsを利用すると、数ステップで新しいマーケットを作成できます。作成できるマーケットは、単一国だけに対してだけでなく複数の国、地域別などマルチに設定可能です。そのため、販売したいターゲットに絞ってマーケットに参入できます。

各マーケットに合わせたカスタマイズができる

各マーケットに合わせて、以下の設定が可能です。

• オンラインストアのドメイン設定
• 複数言語の対応
• マーケットごとの出品商品の管理
• マーケットごとの価格設定
• 関税と輸入税の設定

事業者が販売対象国のユーザーニーズに合う設定や関税、税金関連などの海外販売時に考慮すべき内容を各マーケットに応じて設定できます。

Shopifyの管理画面から全てのマーケットを管理できる

Shopifyの管理画面の「マーケット」から、作成したマーケットを管理できます。オンラインストアの売上やコンバージョン率、販売合計に占める割合を確認できるため、事業者はビジネス全体を包括的に見られます。すると、国内外のマーケットのパフォーマンス確認が可能です。

Shopifyで成功するための海外販売の6ポイント

Shopifyで海外販売を成功させるポイントは、以下の6つです。

• 販売するマーケットの選別
• 現地通貨に対応した価格設定
• 税金の表示
• 国際ドメインの設定
• 現地ユーザーに対応したストア表示
• 販売国のマーケティングと広告

それぞれ6つのポイントを詳しく見ていきましょう。

販売するマーケットの選別

販売するマーケットを選別しておくことがポイントの1つです。Shopifyは世界175 カ国以上でオンラインストアが開設されているため、事業者は自由に各マーケットへ参入できます。

しかし、各マーケットには微妙な違いや独自の文化が存在しているため、無作為にマーケットへ参入すると、なかなか思うような成果を得られません。Shopifyのマーケティングツールを活用し、どの国からのアクセスがあるかをチェックしたり、綿密な事前調査を行ったりして、参入マーケットを選びましょう。

現地通貨に対応した価格設定

現地通貨に対応した価格設定を行うのがポイントです。販売する国のユーザーニーズの1つに、現地通貨決済ができる商品を購入したいという需要があります。

海外市場だけでなく国内市場でも共通していますが、現地通貨に対応していないと商品の正確な値段を把握できません。そのため、現地通貨に未対応のストアだと購買意欲が低下してしまい、なかなか売上につなげられない恐れがあります。Shopifyは130カ国以上の通貨に対応しているため、現地ユーザーのニーズにあわせた価格設定が可能です。

税金の表示

海外販売するときは、参入するマーケットに合わせて、商品価格の税込み/税抜き表示をしましょう。国によって税金制度は異なるため、税金表示の仕方もさまざまです。

そのため、参入するマーケットの税金制度に合わせた価格表示をしなければなりません。Shopifyでは、参入するマーケットを基準に、自動的に商品価格を税込みもしくは税抜き表示にできます。

国際ドメインの設定

Shopifyによる越境EC運営で成功するには、海外販売するストアドメインを参入する国や地域に合わせることもポイントです。国際ドメインとは、国や地域に固有するURLを指します。

販売ターゲットにした国のドメインを使用すると、現地ユーザーに対して国内版サイトを閲覧していると実感してもらえます。Shopifyでは各マーケットに合わせて、メインドメインやサブドメインの設定や管理が可能です。

現地ユーザーに対応したストア表示

海外販売する際は、現地ユーザーに対応したストア表示ができるようにしましょう。現地通貨での価格設定と同じように、自分たちの母国語で構築されたストアを利用したいニーズがあります。

そのため、現地言語に翻訳されたストアは売上増加につなげられるポイントです。Shopifyにはストア表示を翻訳するためのアプリが豊富に用意されているため、アプリを導入次第すぐに対応できます。

販売国のマーケティングと広告

販売国でのマーケティング施策や広告出稿も、ポイントの1つです。現地ユーザーにあわせたキャンペーン施策や広告を打ち出すと、コンバージョン率の向上を図れます。オンライン媒体で打ち出す広告や宣伝文句は、販売国の言語仕様に変更し、訴求先も国際ドメインURLに指定することが重要です。

Shopifyで海外発送する際に導入したいアプリ

Shopifyは、海外発送したいストアオーナーのニーズを満たすアプリを数多く用意しています。アプリを導入すると、海外発送にかかる手間やコストの削減が可能です。今回は以下のアプリを紹介します。

• easyRates: 日本郵便
• FBL DIMENSIONAL SHIPPING RATES
• Ship&co
• langify

それぞれのアプリについて詳しく見ていきましょう。

easyRates: 日本郵便

引用：easyRates: 日本郵便 Shopifyアプリストア

easyRates: 日本郵便は、日本郵便が提供している国際郵便サービスを利用して配送するストアを対象とした、配送料金自動計算アプリです。配送先と注文商品に基づき、国際郵便サービスの配送料金を自動計算します。さらに、追加手数料の上乗せや購入金額に応じた送料無料、梱包重量による配送料調整などのカスタマイズ設定が可能です。

FBL DIMENSIONAL SHIPPING RATES

引用：FBL DIMENSIONAL SHIPPING RATES Shopifyアプリストア

FBL DIMENSIONAL SHIPPING RATESは、容積重量による配送料計算ができるアプリです。DHLアカウントと連携すると、商品購入時にDHLサービスを利用した際の正確な配送料金を提示できます。

配送料は、アプリに登録した商品と梱包する箱のサイズ情報を元に算出されます。商品のサイズと梱包する箱のサイズは、手入力による情報登録だけでなくCSVファイルによるインポート機能により一括登録が可能です。

Ship&co

引用：Ship&co Shopifyアプリストア

Ship&coは、国内および越境ECに関するストア業務を一元管理できる配送管理アプリです。主に以下の6つの対応ができるため、一連の配送管理業務を1つのアプリ上で完結できます。

• 国内・越境ECの複数ECストアのオーダー管理
• 各配送業者アカウントとの連携
• 送料比較
• 送り状とインボイスの発行
• 追跡情報の自動同期
• 発送完了メールの自動送信

さらに、Shopifyストアに入ったオーダー情報と配送業者アカウントを連携すると、注文情報と配送情報の自動同期が可能です。ストア運営者側の手入力によるデータ操作が不要になるため、人為的ミスの防止と作業コストを省け、より正確な配送プロセスが実現できます。

langify

引用：langify Shopifyアプリストア

langifyは、ストアに表示されている言語を多言語に翻訳するアプリです。ストアに流入したユーザーの使用言語を解析し、該当する言語に翻訳したページに自動で切り替えます。もちろん手動での言語切り替えも可能で、マーケットに合わせた専用のスイッチャー機能が搭載されており、ユーザーニーズに寄り添ったアプリです。

他の翻訳アプリでも多言語の追加はできますが、種類や契約プランによる制限があるため、複数言語に対応できません。一方で、langifyは追加できる言語が無制限のため、参入するマーケットの数だけ言語追加が可能です。

Shopifyと連携できる発送代行サービス

受注した注文情報を外部サービスに連携し、発送にかかるプロセスを代行したいと考える事業者もいるのではないでしょうか。Shopifyではそんなユーザーニーズを満たす、発送代行サービスと連携する仕組みを確立しています。Shopifyと連携できる発送代行サービスとして、主に以下の3つがあります。

• OPENLOGI（オープンロジ）
• NEOlogi（ネオロジ）
• AnyLogi（エニーロジ）

それぞれのサービスについて詳しく見ていきましょう。

OPENLOGI（オープンロジ）

引用：OPENLOGI 公式サイト

OPENLOGIは、ECストアの物流に関する一連の業務をすべて自動化できる物流サービスです。Shopifyと連携すると、商品の受注から発注までを自動化できるため、出荷指示を不要にし、本業への作業を集中できます。国内だけでなく海外発送に対しても同じ配送プロセスを提供しており、各マーケットのニーズに沿った配送方法を選択し、対応が可能です。

NEOlogi（ネオロジ）

引用：NEOlogi 公式サイト

NEOlogiは、初期導入費と固定費が0円で始められる物流サービスです。日本を含む世界150カ国以上に出荷可能な専用のクラウド型物流システムを構築しており、ECシステムと連携して自動出荷に対応しています。

出荷1件ごとに利用料金を支払う完全従量制を導入しているため、事業者は受注した商品出荷分のみの支払いで対応できます。2021年にShopify向けのアプリの提供が始まり、Shopifyで管理している出荷データや商品データ、在庫データ、出荷完了データの連携が可能になりました。

出荷指示は国内や海外、全ての地域から選択できるため、ユーザーの発送先に応じて振り分け可能です。出荷が完了すると、配送方法や追跡番号、注文ステータスを自動反映するだけでなく、出荷完了メールも自動で配信されます。そのため、一連の出荷作業にかかる人的コストを大幅にカットできます。

AnyLogi（エニーロジ）

引用：AnyLogi 公式サイト

AnyLogiは、国内外のEC事業者を支援する物流管理サービスです。ECサービスと物流パートナーのネットワークを保有しているため、商品管理や決済確認、在庫の入庫、保管、出荷、配送を一貫して管理しています。AnyLogiとShopifyを連携すると、海外発送で必要な受注情報の管理や関税の設定、各配送サービスと連携などが可能です。

Shopifyを活用した海外販売事例

引用：amirisu オンラインストア

実際にShopifyを活用して海外販売を行っている事例として、amirisuを紹介します。amirisuは、京都と東京に実店舗を構えている毛糸店です。日本ではあまり見たことがない毛糸を海外から仕入れ、日本を中心に商品販売していくビジネススタイルを確立し、競合と異なる商品を用意して差別化を図っています。

amirisuのECストアは、言語と通貨の表示を切り替えられる仕組みを取り入れており、海外ユーザーからの注文にも対応できるよう構成されています。また決済手段として、クレジット決済のほかにPayPalを導入しており、クレジットカードを持たないユーザーや、カード利用したくないユーザーも購入が可能です。

多言語対応や現地通貨の表示、海外ユーザーが購入できる仕組みを用意していることからわかるように、海外販売で押さえるべきポイントをしっかり把握したストアといえます。

海外発送する際の注意点について

Shopifyだけに限らず、海外発送する際の注意点として以下の3つが挙げられます。

• リードタイムが国によって異なる
• 販売国の法律・規制を確認する
• 各国の関税について確認しておく

それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

リードタイムが国によって異なる

発送先によって配送にかかる日数が異なることに注意しましょう。日本から距離が遠ければその分リードタイムがかかります。そのため、マーケット参入前に対象国のリードタイムを調べる必要があります。

配送方法によってリードタイムを短縮できますが、配送状況や情勢によって日数が前後する恐れがあります。基本のリードタイムを把握した上で、余裕を持った配送日数を提示することがポイントです。

販売国の法律・規制を確認する

販売する国によって法律や規制が異なるため、事前に知っておく必要があります。販売する商品の種類や販売数量、使用目的によって必要な許可証やライセンスが異なります。

例えば、化粧品販売を検討している事業者の場合、含まれている成分が販売国の成分基準を満たしているか確認が必要です。基準を満たさない場合、販売禁止や入国禁止になる恐れもあるため、販売国が定めるルールを把握しておきましょう。

各国の関税について確認しておく

海外発送する場合、関税の支払いを求められます。関税は大きく分けて、以下の4つに分類されます。

• 従価税：輸入品の価格に応じて発生する関税
• 従量税：輸入品の個数、容積、重量などを基準とする関税
• 混合税：従価税と従量税を組み合わせた関税
• 特殊関税：不公正な貿易取引や輸入の急増などの特別な事情がある際、自国産業を一時的に救済するための関税

それぞれの国と地域によって、関税にかかる税率や適用される種類が異なるため、事前リサーチが必要です。

まとめ

Shopifyでの海外発送の良さは、海外マーケットも視野に入れた機能や設定を標準搭載している点です。海外発送にかかる送料設定や関税設定など、海外販売のストア運営で必要なバックオフィス部分を網羅しているECプラットフォームはなかなかありません。これから海外販売をしていきたい事業者や将来的に参入したい事業者は、これを機にShopifyの導入を検討してみてはどうでしょうか。

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